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-The Last World-
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- 2008/08/18(Mon) -
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A PROLOGUE
樹木が、灰色の壁を覆いつくしている。本来は樹木の色であるはずのそれは、今赤い日差しに当てられて橙色に輝いていた。 そこはもともと都市だったという事実が、もはや容易には確認できないほどに成り果てている。 その街の入り口だったであろう高い柱のそばには、2つの人影。 「これは…もうダメだな」 白く固化して軽くなった木を慎重に撫でながら疲れたマントを羽織った男が呟く。 土色のマントも男の顔も、赤く染まっている。 彼を説明するには、“ナイフのようだ”の一言で足りてしまう。 鋭く研ぎ澄まされた刃。誰もが近寄るのを一瞬躊躇うほどの存在感。 それはひたすら静かに、ただ振るわれるのを待っているようだ。 恐れを微塵も感じず、己の使命のみを果たす。 その男が、高い柱に張り付いた蔦を静かに取り除いた。 「…マンチェスター……ここの名前…だったのか」 手を離し、表情を変えることなく首を振った男の後ろで一人の女が弾んだ声を上げた。 「ヴェイアさまが“繋がれ”ばきっとすぐに人が住めるようになりますよっ!」 西暦が終りを告げ、世界から戦争が拭払された時代。 人々は長い歴史に違わず戦いを止められていなかった。 ただしそれまでと違う点をあげるとすれば―それは、人との戦いではない―という一点だ。 人類などよりも遥かに強靭なもの。 それは自然との闘いであった。 ―The Last World― 「ねぇヴェイアさま、実は私、こうしてあなたと旅をするのが夢だったんですよ!」 「そういえばホロンは地上にくるのは初めてだったな」 「そうなんです!作られてからまだ1年だからまだ早いくらいかな、と思ったんですけれど」 ―ホロンは人工記憶媒体の一つである。 女性の身体をしているが、それとて誰かの遺伝子を使った作り物に過ぎない。 「ねぇヴェイアさま、どうして地上に降りようかと思ったんですか?」 「…プライバシーだ」 「では、どうしてヴェイアさまは私を連れ出してくれたのですか?」 「…プライバシーだ」 「…そう、ですか…」 ホロンは作られた存在である。 その身体は、人間の身体を遺伝子工学を用いて完全に再現されたものだ。 もちろん臓器もあれば、脳もある。 だが人間はやはり神にしかつくることの許されない存在だったのだ。 進んだ操作工学で身体は作られても、それは決して動くことはない。 オリジナルの人間と全く同じ構造をしていても、それはやはり「人形」なのであった。 その身体にイノチを吹き込むのが、脳力である。 地上に降りることを唯一許される存在も、ヴェイアのような脳力者と呼ばれる人種とホロンのような人工生命体だけなのだ。 脳力とは、彼ら人類に残された最後の希望だ。 どれだけ離れたところにいようとも、対となる者とはいつであろうと繋がっていられる力。 その対象は人に限定されない。ゆえに彼らは浄化にあたるのだ。 大いなる自然と繋がり、地球を救うために。 「しかしホロン、お前にも夢はあるんだな」 「はい!たーくさんありますっ」 ヴェイアは飲んでいた水の入ったパックをホロンに渡しながら聞いた。 ホロンは人工生命である。普通人工生命は誕生してすぐに、「道具」としての使命を帯びることとなるのだが。 「お花屋さんにもなりたいです、ケーキも焼いてみたいです、あ、あとヴェイアさまにずっとお仕えしたいですっ!」 ありがとうございます、と会釈しながら並べる夢はしかし、今の状況では不可能なものばかりである。 だが― 「―それは、いい夢だな。きっと叶うさ―」 2人の旅は、まだ始まったばかりだった。 |
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T.L.W. 1話
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- 2008/08/18(Mon) -
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第1話【A artificial life HoLoN】
「すごい、すごいですねヴェイアさま!」 マンチェスターは河川の交わる都市であったというデータはコロニーで見た。 水と調和を愛し、A.N.E.U.が水星圏のコロニーを建設した後も最後まで生き残っていた街の一つだったそうだ。 今でも巨大な川が三本、廃墟の中心で合流している。 「ここはかなりマシだな。今日はここで泊まろう」 ヴェイアとホロンの二人は着陸した宇宙艇から二人乗りのスクーターを取り出し、それでマンチェスターにたどり着いたのだ。 イギリス、と書いた土地にたどり着いてからはなだらかな丘陵地帯が増えたおかげでスクーターも乗りやすかった。 「高いですね…すごいです…」 ホロンが見上げているのは、巨大な時計塔である。 目の前にある扉のアーチの上に屋根が見え、その上に聳える三角屋根の時計台が特徴的な。 「―大学だったようだな」 口をあけて上を見上げるホロンに並んで地図を広げる。 だが今はそれに巻きついた樹木が全体を遮り、原型はほぼ留めていなかった。とはいえ崩れ落ちるようなものではない。 恐らく樹木も、この大学を取り込んだのではなくただ単に上へ、上へ伸びるために塔を利用しただけだ。 遥かな太陽を目指して。 ぼんやりと考えていたヴェイアは、突然横手から衝撃に襲われる。 「今日はここで寝るんですよね!?嬉しいですー!」 「な、ホロン、離れろっ」 満面の笑みで抱きつくホロンにあきれつつ、ヴェイアは時計塔を押さえ込んでいる巨大な木に優しく触れる。 「その前に仕事だな」 そう言ったとたん、ホロンの表情が真顔に戻った。 すぐに身を離し、彼女は樹木に額を付けて眼を見開く。 ヴェイアも、脳を活性化させつつ自分の意思を磨くイメージを広げた。 ――ニンゲンは、もうキミタチをコロサナイ―ダカラ― 二人の瞳が朧に輝いた。夕暮れが夕闇に変わる払暁の中、彼らの双眸は静かに光っている。 ―意思が繋がるのが感じられた。 ―身体全体の骨が涼しくなるような感覚。 木に触れた掌が温かくなるのが分かった。 暗闇の中にひとつ、蝋燭の明かりが灯った。暖かく、優しい色だ。 ホロンはゆっくりと目蓋を持ち上げる。 わたしが目覚めるときは、いつもヴェイアさまがいてくれる。 無表情なのになんとなく優しくて、大好きな雰囲気。 「お前はそんなに使えないんだから、待っていればいいのに」 わたしに気付いたヴェイアさまが苦笑しながら抱き起こしてくれる。 とってもあったかい…。 ちょっとくらくらする頭でなんとか座る。 「でも、出来ることはしなくちゃいけませんから!それに、ヴェイアさまだけが働くなんて…」 ヴェイアさまの仕事は、ちょっと説明が難しい。 地上を占領しているいっぱいの植物を、傷つけないで帰ってもらうこと。 そういうことが出来るヴェイアさまのような人たちは、脳力者って呼ばれてるみたい。 コロニーで生まれた、新しい人類のことだってヴェイアさまが言ってた。 どんなものでも心を通じさせて、話し合えるんだって。 「わたしにだって、ちょっとだけでもお手伝いができるなら…」 そう、どうしてか分からないけれど、その力が人工生命の私にもちょっとだけ使える。 ヴェイアさまのように、自分の脳を制御するようなことは出来ないけれど、生き物と繋がることくらいはできた。 「終わった途端に倒れられて、その後お前を運んだりするのも大変なんだぞ」 笑いながらヴェイアさまが言う。 そう。わたしは力が弱すぎて、すぐに疲れてしまう。 「ごめんなさい…」 確かにそっちの方がヴェイアさまには迷惑かも知れない…。 「でも…ありがとう。その気持ちだけで十分だ」 ヴェイアさまが微笑んでくれるだけで、次こそは頑張ろうっていう気になれる。 いつか、本当にヴェイアさまの役に立てるように…。 |
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自己紹介
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- 2008/08/18(Mon) -
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―管理人、紫苑です。
好きなモノは本、音楽、そしてヒト。 年代は20歳付近。 ちょっと変わった職業に就いています。 趣味は―物書き―読書―絵画―寝ること―考えるコト。 相当変人だと言われますが、それを嫌だとは思いません。 ヒトには他と違うということを快楽に感じる本能が有ります。 集団への帰巣本能を持ちながら、他よりも一歩先を進まねば気がすまない愚かな種なのです。 でも、だからこそ。 私はヒトは好きなのです。不完全だからこそ面白い。 私は最も普遍的なヒト。 まだまだ自分は好きだとは思えませんが、いつか自分を信じることができるようになりたい― そんな紫苑です。 |
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